ゆきのよあけ いまむら あしこ・文 あべ 弘士・絵 童心社 27x20cm
『ゆきのよあけ 』
いまむら あしこ・文
あべ 弘士・絵
童心社
かあさんとは、ずっと、はぐれたままです。
おそろしいきつねに、おそわれて にげた、
なつの あの日からです。
そのときから のうさぎの子は、ひとりで、くさをさがしてたべ、
ひとりで、トゲのある ノイバラのしげみで、ねむりました。
そこなら あんぜんだと おもったのです。…
(本文より)
母親と離れ離れになってしまった
野うさぎの子。
季節が過ぎていき…。
のうさぎの子は、しにものぐるいで ゆきをけります。
ゆきを けって けって、けりあげます。
いきのつづくかぎり ゆきをけり、まえへ、まえへと
とびだしてゆきます。
あしをとめた そのときが、
のうさぎの子の いのちの おわりなのです。…
(本文より)
「うごかないで!じっとふせてっ!」
と、かあさんの声が、耳の奥に響きます。
のうさぎの子のいる雪の森が、
目を覚まし、
夜明けの歌を歌う…
厳しい自然の中で、
ひとり、小さかったのうさぎの子。
危険を乗り越えたことに
強い喜びを感じて
たちあがり、耳をピンと立て…
後ろ足で思いっきり強く
雪を叩く。
それは
生きる よろこびの
ばくはつ。
ゆきのよあけに、
命がつづいていきます。