『おにたのぼうし』文・あまんきみこ 絵・いわさきちひろ ポプラ社 25x22cm
『おにたのぼうし』
文・あまんきみこ
絵・いわさきちひろ
ポプラ社
まことくんの家の物置小屋の天井に、
去年の春から住んでいる、くろおにのこども、
おにた。
おにたは、気のいい
おにでした。
まことくんの無くしたビー玉を、
こっそり拾ってあげたり、
にわか雨が降った時には、
干物を茶の間に投げ込んでくれたり。
お父さんの靴をピカピカに光らせておいたこともありました。
でも、誰も、おにたがしたとは、気づきません。
恥ずかしがりやのおにたは、
見えないように、用心していたからです。
豆まきの音を聞いたので、
音も立てず、おにたは、
つのを隠すために、古い麦わら帽子をかぶり、
物置小屋を出て行きました。
「にんげんって おかしいな。
おには わるいって、きめているんだから。
おににも、いろいろ あるのにな。
にんげんも、いろいろ いるみたいに。」
と、おにたは思いました。
そして、おにたは
まめのにおいがしない
柊も飾っていない、
トタン屋根の家を見つけて入って行きます。
その家には女の子と、
病気で寝ているお母さんが住んでいました。
いわさきちひろさんが描いた、
気のいい、おにの子ども、
おにたの優しさと悲しさ、
切ないストーリーが心に残ります。
1969年7月に発行された絵本。
作者 あまんきみこさんは、
子どもの頃、豆まきをしながら、
追い出されるおにのことを思っていたそうです。
そして、
抒情的な素晴らしい絵を、
この本のために描いてくださった
岩崎ちひろ先生に、心からお礼を…と
おわりのあとがきに書かれています。